先ほどのインプラントに関する投稿の続きです。
よく「インプラントって一生持つんですか?」と聞かれます。適切な処置をすれば長期的な予後は予測されますが「一生持ちます」とは断言できません。その理由として、現在使用されているチタンの骨結合型インプラントがはじめて人間に応用されたのが1965年のことです。その患者さんはすでに亡くなられていますが1967年に2番目に治療を受けた患者さんはまだ存命であると聞いています。スウェーデンに留学した際、その患者さんのお口の中を見る機会がありました。「これが現存する最古のインプラントか~」と深く感銘を受けたことを思い出します。そう考えると現在2015年、一番古いインプラントでも約50年しか歴史がないのです。ですので不用意に「一生持ちます!」とは言えないのです。
ただし、歯の抜けた穴に代わりのものを入れて噛むというインプラントの考え方は紀元前からあったようです。歯が抜けたあとに石や貝殻を埋め込んで噛んでいたそうな・・・。考えただけでも痛いですね・・・。
現存する最古のインプラント患者のレントゲン写真、お口の中の写真です。50年近く経過してもしっかりと骨の中に安定しており何の問題もありません。
今から見れば歯の下にインプラントが見えていたりして見た目こそ少し悪いですが清掃さえ気をつければ機能的には問題ないようです。
骨とチタンが結合することを発見した「現代インプラントの父」であるブローネマルク先生とこの患者さんの写真です。昨年末にブローネマルク先生は逝去されました。ノーベル医学生理学賞を受賞してもおかしくないほどの功績を残しつつそれが実現することはありませんでした。しかし先生の残した功績は、これまでもこれからも世界の歯科界に大きな恩恵をもたらしていることに変わりはありません。直接お会いすることはできませんでしたが先生のような私利私欲に走らない医療人でありたいと思います(金儲けに走ったと思われるのが嫌でインプラントに関する特許を取得しなかったそうです)。